2016年12月14日

夏目鏡子・述/松岡譲・筆録『漱石の思い出』(文春文庫)

三国志の英雄で一番誰が好きかと訊かれて
諸葛亮と答えるのはちょっと憚られる、のと同様に、
好きな作家はと訊かれて夏目漱石と答えるのは
何だか遠慮してしまう
NIJOであります。

しかし自宅の本棚を見れば、
『俳人漱石』(岩波新書)やら『21世紀の日本人へ 夏目漱石』(晶文社)
TV番組録画用のHDDにまだ残っている、
「歴史秘話ヒストリア 漱石先生と妻と猫」(NHK、2015)とか
「夏目漱石の妻」(同、2016)とか……。
小説の著作そのものは無いのに、なぜか関連資料が多い。
仕事上の必要もないのに、不思議なものです。

そうなると、当然読んでおくべき一冊が、これ。
偶然ですが、漱石の命日(12月9日)に読み終わりました。

📖夏目鏡子・述/松岡譲・筆録『漱石の思い出』(文春文庫)

読書家ならずともその名を知らぬ者は無い、
日本文学史上の大スター・夏目漱石。
生前からヒット作を飛ばしまくり、
芥川龍之介や菊池寛などの有名どころを門下から輩出、
ついには千円札に肖像を描かれた文豪が
実は家族にとってかなりの困り者だったことは、
知る人ぞ知る事実。
神経衰弱の発症時にはほとんどDV夫、
しかしそんな彼を生涯愛し続けた妻・鏡子が
微に入り細を穿って語り明かす、
超人気作家のプライベートとは……!?

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ラベル:エッセイ
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2016年12月07日

文月悠光『わたしたちの猫』(ナナロク社)

NIJOは(いくつかの例外を除き)少女漫画というものを
ほとんど読まずに育ちまして、
大人になってからちょっと必要に迫られて
とあるティーンズ向けの少女雑誌を1冊、頭から終わりまで読んだら
体質に合わなくて吐きそうになりました。。。

何しろ、掲載されている漫画がどれもこれも、
違う絵の、違う人物たちの、違うシチュエーションなのに、
テーマは全部「恋愛」。
サイドストーリーとかちょっとしたスパイス程度であれば平気ですが、
それが前面に押し出されるとアレルギーが出る体質なので、
中和させるためには少年漫画が必要でした。
(人生に恋愛しかない女の子たちと
人生にサッカーしかない男の子たちって、
同じくらいリアリティがないですよね;)


そんな特異体質のNIJOが、
恋愛詩集を読んでみたというお話。

📖文月悠光『わたしたちの猫』(ナナロク社)

恋は様々な姿をして、わたしたちの前を通り過ぎていく。
飼い主のいない猫、赤く燃える魚、
一切れのレモン、はばたく蝶、
棘を光らせる薔薇、あるいは金平糖。
そして時には一冊の本となって−−。


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ラベル:詩集
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2016年10月29日

文月悠光『洗礼ダイアリー』(ポプラ社)

札幌出身の詩人・文月悠光氏の詩集は、
既刊の2冊ともすでにご紹介しました。
今回は、先月発売されたエッセイ集を。

📖文月悠光『洗礼ダイアリー』(ポプラ社)

10歳で詩を書き始め、18歳で中原中也賞を受賞、
そしてプロの詩人に。
そこだけ取り出してしまえば非凡も非凡、
しかしその日常生活は、
割と平凡で、現実的で、ありきたりな悩みに満ちている。
初めてのアルバイトでのほろ苦い社会勉強、
セクハラに毅然と立ち向かえないもどかしさ、
スクールカーストにもがいていた学生時代、
恋愛への臆病さが招く悲喜こもごも。
そんな「普通」のエピソードの数々が、
「普通」の読者たちの心へまっすぐに届けられる。
さりげなく詩的な余韻をまとって……。


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ラベル:エッセイ
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2016年09月29日

長嶋有『三の隣は五号室』

芥川賞作家の長嶋有は子供のころ、北海道登別市に住んでいたそうで
隣町である白老にも馴染みが深かったそうです。
そのためかどうか、白老町立図書館には
長嶋作品及び「ブルボン小林」名義の書籍が
結構充実しているような気がします。

ということで、
今年6月に発行された谷崎潤一郎賞受賞作も
この図書館で出会いました。

📖長嶋有『三の隣は五号室』(中央公論新社)

藤岡一平(居住期間1966-70年、学生)、
二瓶敏雄・文子(同1970-82、会社員とその妻)、
三輪密人(1982-83、裏稼業)、
四元志郎(1983-84、単身赴任)、
五十嵐五郎(1984-85、無職)
六原睦郎・豊子(1985-88、病気療養中の妻とその夫)、
七瀬奈々(1988-91、失恋直後のOL)、
八谷リエ(1991-95、女子大学生)、
九重久美子(1995-99、女子大学生)
十畑保(1999-2003、単身赴任)
霜月未苗(2004-08、居候・桃子と同居するOL)
アリー・ダヴァーズダ(2009-12、イラン人留学生)
諸木十三(2012-16、定年退職間際の元ハイヤー運転手)――
1966年から2016年まで50年間、
会ったこともない前の住人たちの痕跡を
少しずつ留めた部屋に、
また新しい人間が住みつき、そして去っていく。
「第一藤岡荘」五号室に暮らした歴代の住人たちのエピソードが
入れ替わり立ち替わり、行きつ戻りつ繰り広げられる、
ウェルメイド・ストーリーズ!


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ラベル:小説
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2016年07月10日

ヨナス・ヨンソン/柳瀬尚紀訳『窓から逃げた100歳老人』(西村書店)

身の周りに、九十歳を越えて
なお現役で活躍中のかたが数人いらっしゃいます。
とてもしっかりされている、などと
評価するのもおこがましいくらいに
元気で、優しくて、腕利きで、頼もしい男たち。
彼らを何もすることのない部屋に押し込めたら、
もしかしたらこんな事件が起こるのでしょうか。

📖ヨナス・ヨンソン/柳瀬尚紀訳『窓から逃げた100歳老人』(西村書店)


今日でめでたく100歳を迎えるというその日、
アラン・カールソンは施設の窓から脱走した。
バスターミナルでたまたま大金入りのスーツケースをくすね、
持ち主のギャングから逃げる間に出くわした無頼漢と意気投合。
一癖も二癖もあるはみ出し者たちを次々と仲間に加えながら、
ギャング・警察双方からの逃走劇は続く。
と同時に、20世紀という激動の時代を生き抜いたアランの
壮大にして奇想天外な経歴が明かされていく。
果たしてこの老人は何者なのか、
そして彼が窓から逃げ出した理由とは−−。


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2016年02月13日

さらばあぶない刑事

いつか柴田恭兵の🎧「Kyohei Excellence」を紹介したことがありますが、
そもそも彼の歌を聴くようになったのは「あぶない刑事」が好きだったからで、
しかし実のところNIJOはドンピシャの「あぶ刑事」世代ではなく
夕方の再放送でハマったクチなのです。
もしもリアルタイム世代で、周りのみんなが見ていたとしたら
旋毛曲がりの流行嫌いゆえ、きっと興味を持つことはなかったでしょう。
(たぶんGODIEGOを好きになるきっかけとなった「西遊記」もそう)
そういう意味では、少し遅れて生まれてよかったかもしれません。

公開中の「さらばあぶない刑事」を観に行ったら
観客が自分より上の世代の人たちばかりだったので、
そんなことを思いました。

映画「さらばあぶない刑事」(東映)

港警察署の名物コンビ、鷹山刑事(タカ)と大下刑事(ユージ)。
定年5日前という瀬戸際になっても、
潜入捜査やらブラックマーケットへの殴り込みやら、
相変わらず無茶を続けている。
そんな2人が刑事生活最後のターゲットに決めたのは、
中国マフィアやロシアンマフィアと連携して横浜を牛耳る暴力団幹部・伊能。
しかしその伊能は逮捕を目前にして、何者かに惨殺された――。
ユージが更正させたはずの青年・カワスミや
タカの最愛の恋人・ナツミをも巻き込んで、
横浜は史上最もあぶない5日間を迎える!!



人気TVドラマが映画になるとき、
その作り方の方向性は大きく2つに分かれると思います。
一方は、ドラマのファンも、ドラマを見たことがない一見さんも
両方が楽しめるように作るパターン。
もう一方は、ドラマファンだけをターゲットにしているパターン。
本作は、完全に後者といえるでしょう。
初めての人が見ても楽しくないことはないけれど、
疎外感を覚えるのは避けられない。
それだけ、往年のファンへのサービスが旺盛だということです。

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2016年01月24日

蝦名泰洋・野樹かずみ『夕焼けを見る装置』

最近、短歌がちょっとしたマイブーム。
詠むほうじゃなくて、読むほうです。
何しろNHK短歌を録画して見ているくらいで、
自分でもちょっと驚いています。

📖蝦名泰洋・野樹かずみ『夕焼けを見る装置』

短歌両吟、つまり
二人で短歌を交互に詠んでいったものを
まとめた連作集。
前の一首から連想して紡がれる次の一首……の間に
いきなり現れる発想の飛躍や、
想像力をかき立てる不可思議な言葉選び、
やさしいようでシニカルな眼差しを
存分に楽しめる一巻60首×三巻。
表紙のタイトル「夕焼けを見る装置」と
裏表紙の英語「HUMAN BEING」の対比も鮮やか。
頭の中で小旅行をしたような気分になる一冊です。


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2015年11月19日

又吉直樹『火花』(文藝春秋)

元来、「芥川賞受賞作」という冠詞にはさほど食指が動かないのですが、
芸人・ピース又吉の言語センスには割と昔から注目していたこともあり、
遅ればせながら読んでみました。
(厳密に言うと、出版後早々に読むつもりが、
受賞して話題になってしまったがために
むしろ今まで読むタイミングを逸していたのでした💧)


📖又吉直樹『火花』(文藝春秋)

浮き沈みの激しい芸能界に、
泡のように次々と生まれては消える若手漫才師たち。
そんな夢見る若者たちの中の一人である「僕」は、
ある営業のステージで、運命的な出会いを果たす。
優しくて純真で、笑いにはどこまでも真摯で、
それゆえに世の中と折り合うことのできない
先輩芸人「神谷さん」。
「俺の伝記を作ってほしいねん」
言われたとおりに、「僕」は神谷さんのことを
ノートに書き留め始める……。


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2015年10月30日

森見登美彦『有頂天家族』(幻冬舎)

他人様の飼い犬に赤ちゃん言葉で声をかけたり
自慢のペットの動画をネットに流したり
野良猫に餌をやったり、といった類の
あからさまな動物愛玩行動を取らないので
なかなか気づかれにくいのですが、
NIJOはかなりの動物好きだと思います。
好きが高じて、
かえって「愛玩」することに抵抗を覚える
ようになり、
今はもっぱら挨拶するくらいですが、
敬意をもって愛しているのです。

ですからもちろん、動物を主人公にした作品も好きです。
映画化された(見ないけど)
斎藤惇夫『冒険者たち ガンバと十五匹の仲間』
今でもバイブル。
大人になってから読んだものでは
奥泉光『「我が輩は猫である」殺人事件』
古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』
映画「キタキツネ物語」のサウンドトラック
ドライブ中にエンドレス再生することも🚗

さて、ネズミ、ネコ、イヌ、キツネときて、
今回はタヌキのお話。


📖森見登美彦『有頂天家族』『有頂天家族 二代目の帰朝』(幻冬舎)

京都の町には古来より、
狸と天狗が人間に紛れて暮らしている。
先代の「偽右衛門」こと狸界の総領、
故・下鴨総一郎が遺した四兄弟−−
父の跡継ぎを目指す堅物の長男・矢一郎、
蛙の姿で井戸の底に棲む次男・矢二郎、
面白く生きることが信条の三男・矢三郎、
不器用ながらいつも一生懸命な四男・矢四郎。
中でも偉大なる父の「阿呆の血」を
最も色濃く受け継いだ矢三郎は、
凋落したワガママ天狗の赤玉先生や
天狗的才能を開花させた人間の美女・弁天に振り回されながら、
狸鍋愛好集団「金曜倶楽部」との攻防や
父の仇である叔父・夷川早雲との対決までも
明るく可笑しく乗り越えてゆく……!


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2015年09月11日

笹公人「念力家族」

「この作品はフィクションです。」
という注意書きは、ドラマとか小説とか、
どう考えてもフィクションだろ、
という作品の終わりにばかり登場しますが、
不思議と詩集や歌集や句集の末尾には
お目にかからない気がします。

この歌集もしかり。

本笹公人「念力家族」(朝日文庫)

陰膳をおかわりする行方不明の兄、
憧れの先輩を念写して微笑む妹、
前世の母を恋う弟とそれに嫉妬する母、
奇妙な発明を繰り返す父親、
不機嫌になると三味線を掻きならして龍神を呼ぶ祖母。
不思議な力を持つ一家が
不思議なことばかり起こる町で
不思議な人々と過ごす日常を淡々と、
三十一字で描写する虚構歌集!


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2015年03月21日

和田竜「のぼうの城」

映画を見る習慣はないのですが、
映画のCMや予告を見て、興味を持つことはあります。
興味を持っても、基本的には映画館に出向くことはなく
いつか、たまたま時間のあるときに
地上波で放送されれば見てみようかな、
という程度のことなのですが。

2011年公開の「のぼうの城」は、
野村萬斎主演ということで見てみたいと思った作品です。
でも結局見るには至らず、たまたま時間のあるときに
図書館で見かけたので借りてみました。



本和田竜「のぼうの城」(小学館)

天下統一を目前にした豊臣秀吉が、
次に狙うは小田原の北条氏。
その支城のひとつである武州忍城を守っていた成田家の当主・氏長は、
表面上は北条からの援軍要請に応じながらも、
実はすでに豊臣軍に内通する腹を決めていた。
敵軍がやってきたらすぐに開城するよう命じられ、
忸怩たる思いで留守を預かる家臣たち。
まして、領民たちに公然と「(でく)のぼう様」と呼ばれる
無能な腰抜けの若殿がそのリーダーとあっては……。
ところがこの「のぼう様」こと成田長親、
主命に反して、豊臣軍の使者に突然の宣戦布告。
この瞬間、取るに足らぬ湖上の浮き城が、
歴史に残る激戦の舞台と化した!


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2014年12月23日

古川日出男「アラビアの夜の種族」

好きな本はあっても好きな作家は挙げられない
というのは、
特定の作家の本ばかりを読むということができない性分で、
2、3タイトルしか読んでいないくせに
好きというのはおこがましいという遠慮からなのですが、

この人も、そういった
「好きと言いたいけど、言うほど読んでいない」
作家のうちの一人です。

本古川日出男「アラビアの夜の種族」(角川文庫)

幻の奇書”The Arabian Night Breeds”の邦訳として騙られる虚構の舞台は、
ナポレオンの侵攻を前に色めき立つカイロの街。
いち早く危機を察知した知事イスラーイール・ベイに、
美しくも聡明な青年奴隷・アイユーブが
戦わずして勝利する秘策を進言する。
読む者を虜にし、破滅に追いやる「災いの書」−−
それをフランス語に翻訳して敵将に贈るのだという。
しかしもちろん、「災いの書」など、この世には存在しない。
それは、これから創られるのだ。
夜の語り部ズールムッドが紡ぎ出す魅惑の物語を、
書家に筆記させることによって。
アイユーブとズールムッドと書記とその奴隷、
4人の「夜の種族」が夜毎に語り聞く妖しくも壮大なる物語とは……?



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2014年09月22日

「STAND BY ME ドラえもん」

先日の記事では
ドラえもんを3Dで表現することに
食わず嫌い的な発言を嘯いていたNIJOですが、
その後、縁あって件の映画を
しっかり3Dメガネ付きで鑑賞する機会に恵まれまして、

映画「STAND BY ME ドラえもん」(2014「STAND BY ME ドラえもん」製作委員会)

結論から言うと、
3Dなドラえもんは可愛かった揺れるハートのです。

あの球を主体とするフォルムが
「円み」ではなく「丸み」として再現されているという、
ただそれだけのことなのに、
のび太のメガネやスネ夫の前髪のリアリティが醸し出す
違和感を差し引いてもお釣りがくるくらいに
可愛かったハートたち(複数ハート)のです。

ごめんなさい、私の負けです。

(ただし、3Dらしさを発揮しようとして
無理矢理作ったような「迫力のシーン」は
別に無くてもよかったと思いますが…)


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ラベル:映画
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2014年08月08日

文庫版「ドラえもん短歌」再読

ある世代の人にとっては鉄腕アトムであり、
ある世代の人にとってはアンパンマンであるものが、
NIJOの世代にとっては
たぶんドラえもんなのだと思います。
好きとか嫌いとかの問題ではなく。



単行本も持っているのに文庫版も買ったのは、
NIJOの入選作も掲載されている(P.137)という
個人的な事情からですが。。。
3D映画とはまったく違うベクトルで
ドラえもんを楽しめる一冊です。
NIJOの一番好きな一首は、文庫版の帯に出ている、
「僕たちが今進んでいる方向の未来にドラえもんはいますか」(仁尾智)

 

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2014年07月28日

若宮明彦「海のエスキス」

リゾート先週月曜は海の日でした。
NIJOが子どもの頃には存在しなかった祝日なので
いまひとつピンと来ないのですが、
七月の晴れ渡った空に青い海というのは
夏休みの始まりの時期というタイミングもあって
なるほどわくわくする取り合わせではあります。

NIJOはもともと、あまり海が好きではありませんでした。
子どものころに行った海水浴場のイメージが強く、
静穏に過ごすには向いていないと思っていたので。
もっとも白老の海は、誰もいないし^^;
毎日のように表情が異なるのが面白く、
最近は海のそばで過ごすのも悪くない
思えるようになりました。



「五十億年の悲哀を抱えた海を
たかだか五十年の思いで描けるのか」。
展示室のデスモスチルスのぽっかり開いた眼窩、
絶滅した始祖鳥の網膜に焼き付いた不意の蒼空。
朝陽屋や夕陽屋や虹屋が忙しく駆け回る世界で
風を見つめ続ける詩人が素描する
「海の話」二十七編。

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ラベル:詩集
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2014年05月20日

池澤夏樹「アトミック・ボックス」(毎日新聞社)

以前に、大学時代から書き続けている長編小説がある、
という話を記事にしました。
その後もちまちまと書き続け、
ようやく終盤に入っているのですが、
完成しても発表できないかもしれないという思いから
何となく筆が進まなくなった時期があります。

実は物語の重要な局面で、大地震と津波が起こるのです。
そのシーンを書いたのはあの震災が起こるよりも
何年も前のことでしたが、
しかし読者がフィクションを読んでいる最中に
現実の記憶に引き戻される危険性が高いという事実は
(読んでくれる読者がそもそもいるのか、という
根本的な問題はさて措いて)
変えようがありませんので。。。

しかし一方で、世の中には、
震災があったからこそ生み出された作品も
数多く見かけるようになりました。



瀬戸内の小さな島で細々と暮らしてきた漁師の父を
癌で亡くしたばかりの大学講師、宮本美汐。
その遺言により託されたCDには、遺書と共に、
亡父が若い頃に携わった国家機密のデータが記録されていた。
日本がかつて水面下で進めてきたプロジェクト、その名も「あさぼらけ」。
28年も封印されてきた負の遺産を受け継いだ瞬間から、
否応なく国家権力を敵に回した美汐の逃避行が始まる!

 

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2014年04月13日

大森洋平『考証要集 秘伝! NHK時代考証資料』

最近は本を買うより借りることが多くなって
感想をまとめる前に返却してしまいがちです。
今回の本も、もう返してしまったのですが
後になって手元に置いておきたくなって
amazonさんに注文中。


NHKの時代劇や歴史ドラマの制作現場で
時代考証を担当してきた著者。
古代から近代まで、
言葉から衣食住まで、
歴史学者ではなく「ドラマの作り手」だからこそ語れる
歴史薀蓄のあれこれを、惜しげもなく披露する一冊。
時代物(風の作品)の作り手なら、
一度は手に取って見てほしい!


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2013年09月19日

文月悠光『屋根よりも深々と』

芸術の秋、読書の秋。
中秋の名月だからといって月並みな書き起こしで恐縮ですが、
この2つを兼ね備えている話題といえば、
やはり詩集をご紹介するのが一番でしょう。
(ちなみにNIJOの辞書に「スポーツの秋」は
記載されておりませんあせあせ(飛び散る汗)


本文月悠光『屋根よりも深々と』(思潮社)

高校3年生で出版した処女詩集『適切な世界の適切ならざる私』で
中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少で受賞し、
摩擦する「世界」と「私」の境で痛み疼く身体から
生々しくも力強い言葉を生み出してきた
札幌出身の詩人・文月悠光、待望の第二詩集。
少女から女性に成長した「私」は今や「世界」を胎内に孕み、
白いページの上へ産み落とすまでに――。




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2013年08月28日

奥泉光『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』

最近は古い文芸誌を読み返すことが多く
あまり本を買っていませんでしたが、
たまたま札幌駅で時間をつぶす機会があって
これ幸いと、厚めの本を手当たり次第に物色しました。
欲しい本はネットで買うのが早いけれど、
まだ知らない本と出会うのはやはりリアルな本屋がベストですね。

本奥泉光『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』(文藝春秋)

下流大学教師、「クワコー」こと桑潟幸一は
前任校でリストラ寸前のところを元同僚の鯨谷教授に救われ、
千葉の片田舎にある底辺大学「たらちね国際大学」に赴任。
新天地でのキャラチェンジには早々に失敗、
鯨谷教授にはいいように使われ、
顧問にさせられた文芸部員にもいいように使われ、
次々巻き起こる怪事件に翻弄される。
貧乏にして無能な負け犬教師・クワコーに
果たしてスタイリッシュな日々は訪れるのか?




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2013年07月08日

池田康『ネワエワ紀』

誰の作品に影響されて詩を書き始めたか?
と、詩人に尋ねれば、
中原中也とか谷川俊太郎とか萩原朔太郎とか宮沢賢治とか、
いろいろな名前が出てくることでしょうが、

「バイロン」と答える人は
まあ、今の日本ではそう多くないですよねたらーっ(汗)

バイロンの詩劇「マンフレッド」の中の一篇
「マンフレッドへの呪い」をきっかけに作詩を始めたNIJOは、
詩(的要素)と物語(的要素)との交渉について
つい興味を引かれてしまう傾向があるようです。


本池田康『詩人の遠征1 ネワエワ紀』(草葉書房)

ネワエワ川の河口の島国ニウアーク、
犯罪都市にして脈動する夢の源。
私、ならぬSは漂流する、
新宿の探偵の示唆、あるいは突如現れた偽の妻の導きによって。
兵士になり、囚人になり、偽札工場の工員になり、
殺人犯になり、乞食になり、行政長官になり。
やがて氾濫するネワエワがニウアークを呑み込むとき、
果たしてSがいるのは船の上か、酒場か、映画館か……
道端で拾った大きな毒針は、
波打つ夢の動脈にとどめを刺せるだろうか?
1ページに1連、紡がれる言葉のまとまりは
蛇行する川のように緩やかに渦巻いて
夢幻の物語を形作っていく――。
表題作ほか、詩的論考的エッセイ(?)「気聞日記」収録。




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